【土船 澄】対談を終えて
こんにちは。土船です。
2週間ほど前、貴族協会の支部長との対談がありました。
指定された場所は、某ホテルの広間。(広間といってもそこまでの広さではない)
緊張はしつつも、ウィキペディアで調べてフォアグラについての一通りの知識を得たつもりだった私には「まあ何とかなるのではなかろうか」という甘い考えも心の奥底にありました。
私は、対談の場で自分がさもフォアグラを知りし者であるかのように振る舞っているイメージトレーニングをしながら会場に向かいました。
広間の入口に着くと、そこには「世界貴族協会日本支部長•田中米太郎氏 フォアグラエッセイコンテスト佳作受賞者•土船澄氏 対談」と手書きで書かれたパネルがでかでかと掲げられており、ここで私は初めて会長の名前を知りました。
私は貴族協会の人に案内されて用意されたパイプ椅子に着いたのですが、その時まだ田中支部長は会場にはいませんでした。会場には、私の他にギャラリーが3人と、ビデオカメラを構えた関係者らしき男性、そして司会の男性の5人のみ。
そしてしばらく謎の無言の時間が経過したと思うと、司会の男性がいきなり
「田中米太郎支部長の入場です!」とばかでかい声で叫び、バーンバカバッカッバッカッバーンといった大げさな音楽とともにプシューッと勢いよく吹き上がるスモークの向こう側から田中米太郎支部長本人が登場しました。
田中支部長は満面の笑みでゆっくりと私の向かい側のパイプ椅子に座り、そして対談は始まりました。
→ 自分
→田中米太郎支部長
本日は田中米太郎支部長と、土船澄さんの御二方に話をお聞きしていきたいと思います。私、司会を務めさせて頂きますMC正造坐右衛門(しょうぞうざえもん)86歳でございます。
それでは、御二方のフォアグラへの想いを お聞きしていこうと思います。土船さんは、「フォアグラエッセイコンテスト」で佳作を受賞されたという事で、フォアグラへの愛も人一倍強く持っておられるのではないでしょうか。
えっと、はい…… 好きですね……(汗)
土船さん、わたしゃあねえ、あなたのエッセイを読んで、感激したんですよ。この鼻毛を長くしてずっとあなたに会えるのを楽しみに待っていたんですよ!
いやあ、あれほどフォアグラを愛されているお方がわたしの他にいなすったとは…! しかも土船さん、まだお若いのに!!
ありがとうございます……(汗)
土船さんは、どこのメーカーのフォアグラがお好きなのかね?
えっと……、るーじぇ…?(汗)
(※ウィキペディアの脚注の1番上のところにルージェ社がどうのと書いてあったから言ってみたが、勿論食べた事は無い)
土船さん!あなたはやはり話のわかる人でいなすったか!ルージェ社のフォアグラは私も愛しているのですよ。本場フランスの香り漂う逸品でございやすよねえあれは。
そうですよね…(汗)
土船さん、わたしゃああなたが気に入った!
それでは話を変えますが、土船さん。ヌーボー•グーラについてはどう思っているのかね?
ヌーボー•グーラ…?
(何それ!? そんなものはウィキペディアに載っていなかったし知らないけど、適当に美味しいとかいってめちゃめちゃ褒めておけば何とかなるはず…)
あれ、めちゃくちゃ美味しいですよね! 高級感があって、まさに貴族の食べ物って感じですよね。
………………
(※ここでしばらくの沈黙が流れ、場が凍りついていくのを感じた)
ど、土船さん……、ヌーボー•グーラが、美味しいと言うのかね?
あの、ガチョウや鴨でもなければそもそも鳥ですらない、
そこら辺のヌボタニシを捕まえて作った粗悪な代物を、フォアグラだと偽って売って炎上した、あのヌーボー•グーラを、
美味しいと、
言うのかね!?!?(怒)
(やばいやばい!!思いっきり地雷を踏んでしまった!!)
(あとヌボタニシって何!?)
(もう、冗談ですと言ってごまかすしかない!)
ヘヘヘ…冗談ですよ!
(※ここで再びしばらくの沈黙が流れ、場がさらに凍りついていくのを感じた)
冗談!?
こういう場面で冗談かね!どういう思考で今冗談を土船さんが言おうとしたのか私には全く分かりませんがねえ!!(怒)
(※急に怒りだしてめちゃめちゃ怖かった)
も、申し訳ございませんでした!
(泣きそう)
(※ここで5分間ほどの地獄のような静寂)
(※静寂が終わったかと思うとここで急に支部長が怖いほどの満面の笑顔に戻る)
じゃ、気を取り直して、他のことを聞いてみるとしましょうかな!
土船さん、プリケッティーについては、どう思うかね?
(うわ…何この人。怖すぎる……)
(しかもまた知らないワード来た…。今度は何て答えたらいいかな…次地雷踏んだらおしまいだから、なるべく色んな解釈ができるような事を言っておきたい!)
(誤魔化さず正直に「知らないです」と言う事が1番の得策なのでは?と思う方もいると思うが、田中支部長の地雷のポイントが分からなすぎて「知らないです」と言ったとしても怒られそうな気がするのと、極度の緊張で私は正直に言おうとは考えられなかった)
プリケッティーですか。あれはすごい味ですよね。(汗)
すごい味!?
土船さん、まさか、プリケッティーを食べた事があるのかね!?!?
えっ……(やば)
………………………
千年に一度、天から地上に降臨する女神プリケットが地上に一つだけ残して去ってゆくと伝えられている幻の金の卵から生まれた鳥で作ったプリケッティーというフォアグラがあるとかないとかと言われている、
あの、伝説上のフォアグラを、食べた事があると、
言うのかね!?!?(驚)
(うわやば!! 絶対嘘ってバレた!)
………………
………………(汗)
なんと…!
こんな所にプリケットを食べたことのある選ばれしお方がいなすったとは…!!
いやあ恐れ入りましたよこれは土船さん!!
(あれ…怒ってない!?)
キエーーーーーーーッ!!キエーーッ!キエーーッ!
??????
キエーーーーーッケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ(気絶)
??????
終わりです。
え?
ご退場下さい。
え?
いいから帰りたまえ!
はい…
このようにして対談は突如終了し、私は広間から退場しました。
今こうして対談のことを振り返ってみると、私は本当に変な組織に首を突っ込んでしまったのだなあとつくづく思います。
司会者も変だったし、田中支部長の怒るポイントと機嫌が良くなるポイントがよく分からないのとか、急に奇声を上げた事とかが怖かったです。
(あと貴族のくせに椅子がパイプ椅子だったのも意味が分からなかったです)
ちなみに対談の中で田中支部長が言っていた「ヌボタニシ」というものが何なのかについては後から検索して調べてみたのですが、よく分からないサイトの変なインタビュー記事しか出てこず、結局「タニシではない」ということ以外はほとんど何も分かりませんでした。(タニシじゃないのかい!)
貴族協会とか名乗っているけど貴族って絶対こんなのじゃないと思うし、最初からフォアグラなんて興味も食べたこともないし(それなのに応募した私が悪いけど)、正直もう二度とこの組織とは関わりたくありません。
今回の対談が、私が貴族協会にお目にかかる最後の機会であった事を願います。
それではさようなら。