平安日記#4〈藤原道喪古(ふじわらのみちもこ)記〉

前回の道喪古記↓
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#4

九月十日のあかつき、道喪古、庭に出でて空を見るに、光りたる椀めきたるもの、宙に浮きてゐたり。

寄りて見るに、一すぢのかげさして、中から道喪古の、緑なる面したる、出で来けり。
道喪古いとおどろきて、「あなや」と言ひけるに、道喪古が母、出で来て、「何事ぞ」と言ひければ、かくかくと言ふ間も無く、緑なる面したる道喪古、「ここにいる道喪古、異人なり。我がこそ真の道喪古なり」と叫びけり。

さるに、道喪古が母、「こはなぞ。汝は何者ぞ。直ちに出て行くべし」と言へば、緑なる道喪古を邸に残して、真の道喪古を追い出しにけり。

道喪古、つひに捨てられたりけるよ。